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書店員が考える「体験型イベント」の先

第1回 「さわや書店」松本大介 前編

売れない時代の新たなコンセプト

 比較対象は、同じ商業施設内にあるもう一つの店。駅ビルの1階という恵まれた立地で、独自にセレクトした商品を販売する力を持つ「さわや書店フェザン店」である。売り手と買い手の良好な関係を、時間をかけて築いてきた。他店と比較するとかなり大きなPOPが、所狭しとばかりに掲げられている。お客さんも、こちらの意図を汲んで、信頼したうえで本を購入してくれる。

 その1階の店と3階の新店は、フロアの違いこそあれ、直線距離にして300メートルくらいしか離れていない。だから新店を出店する際にこう考えた。同じコンセプトの店を目と鼻の先で出店しても、お客さんにも会社にも何のメリットもないと。そこで無い知恵を絞って必死に考えた。

 書店とは、本という情報が集積する場所である。そこにお客さんは集まり、情報を持ち帰ってインプットしてほどなく、その情報を活かすための何かしらのアクションを起こすだろう。この場合アクションのきっかけとなるのは、もちろん本である。情報が具現化した「本」を売るだけではなく、その先に個々人が起こすだろう何かを学び、体験するというアクションまでをプロデュースする場所として書店は機能するはずだ。そう考えて「体験型」を標榜して開店を迎えた。

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松本 大介

まつもと だいすけ

1977年生まれ。岩手県盛岡市出身。都内の大学を卒業後、2001年さわや書店入社。さわや書店本店、フェザン店の勤務を経て、2017年5月19日に盛岡駅、駅ビルフェザンに2店舗目としてオープンした〈ORIORI produced by さわや書店〉の店長を務める。現さわや書店フェザン店店長。

『思考の整理学』外山滋比古(筑摩書房)、『震える牛』相場英雄(小学館)、『限界集落株式会社』黒野伸一(小学館)など多数の書籍がベストセラーとなるきっかけをつくる。

 


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